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東アジア市場の脈絡を紹介

『アジア市場のコンテキスト【東アジア編】 −受容のしくみと地域暗黙知−』(川端基夫・新評論・2006)読了。
東南アジア編に続く第二弾として、韓国、台湾、中国①(北京、上海、大連、香港、広東)の地域単位で紹介。さすがに10年以上前だけに、冬ソナなどトピックは、やや古くなっているが、書かれている地域の各市場脈絡(コンテキスト)ごとの微妙な違いと共通点は勉強になる。できれば10年後の今も定点観測、経年変化として知りたい。
日本だけをみていると、街角の零細な雑貨店、よろづ屋さん、そして飲食なら屋台群は、流通の歴史的経過の中で、必然的に消えていくものと捉えがちだが、他のアジア諸国では、①移動距離が短く、商圏が狭い、②タバコなど一本単位、小分け売り(1割プラス利益)、③かけ売りや値段交渉ができるなどなどの理由で、減ってはいるもののの流通の全体の中での比率は依然高いというのは、学びの一つである。
東南アジア編と同様に、東アジアも東アジアという大きな括りでとえらることは難しい。なぜなら大都市と農村部では全くちがう状況があるから、国単位でも難しい。それぞれの地域の市場脈絡を読み間違えるないためには、ここでも市場の脈絡を読むためには、7つの扉で(1:気候、2:民族・人口、3:宗教、4:市場分布、5:歴史的経緯、6:政策、7:所得)を丁寧に分析・統合してみる必要があることを証明して本となっている。
韓国の場合
・日本企業は反日を気にして進出先に選びにくい地域
・ファミリーマートは間接的(技術提携)で出ているが日本ブランドを意識されていない
・韓国の百貨店は、日本の百貨店の技術提携の影響を受けて誕生している
・儒教文化圏であり、職業観として小売評価低く、老舗が育ってこなかった
・儒教的価値観を反映し、女性の自家消費が目立たないテレビジョッピングが隆盛
・街角のよろづ屋的な存在「韓国スーパー」はコンビニのライバル
・ハイパー業態(GMS的)の「割引(ハリン)店」が隆盛
台湾の場合
・親日にも歴史的経緯で世代で違い3層構造がある
・親日だから進出は容易というわけでなく、市場に受け入れられず撤退も多い
中国の場合
・広い中国は、国単位での市場でなく、地域ごとに大きく違う
・個人より世帯所得、支出を決めるのは、所得の絶対額より配分(※中国に限らず)
・香港などでは小売業より不動産業配下の企業としての価値観の影響大きい(家賃上昇)
目次
第1章 越境するドラマと受容の脈絡
第2章 いま、東アジアで何が起きているのか
第3章 東アジアの「反日」と市場の脈絡
第4章 韓国の流通市場
第5章 台湾の「親日」と市場の脈絡
第6章 台湾の消費市場
第7章 「巨大消費市場」への幻想と市場の脈絡
第8章 中国の流通市場(北京、上海、大連)
第9章 中国の流通市場の脈絡(香港、広東)
第10章 東アジア市場の脈絡を探る
 

4つの家族類型で世界は動く

『エマニュエル・ドットで読み解く世界史の深層』(鹿島茂・ベスト新書・2017)再読。
ソ連崩壊、リーマン・ショック、イギリスのEU離脱、トランプ政権樹立を言い当てたとされ、文明批評の第一人者の一人として日本でも人気の高いのが、エマニュエル・トッドである。そのトッドの理論のベースにある「家族人類学」について、フランス文学を出発点に幅広い分野を語れる鹿島さんが解説してくれる新書である。
最終的には、トッド自身の著作を読んでみるべきだろう。しかし、まずはトッドの思考がどこからくるのか?その根源をイージーに理解するには、ありがたい解説本である。
トッドの著作では細かくは15に家族類型になるが、核になる家族類型は4つであると理解すればよいとしている。4つの家族類型は、「共同体家族」「直系家族」「平等主義家族」「絶対核家族」である。
この4つ類型を、「核家族か二組以上同居する複合家族か拡大家族か?(別の表現では「非権威主義的か?権威主義的か?」という)というタテ軸と、「遺産相続において、兄弟感で「平等」か?「不平等(一子相続)」か?をヨコ軸に図に落とし込んで整理している。
①権威主義的かつ兄弟平等・・・(外婚制)共同体家族でロシア/中国など・・・共産主義/一党独裁資本主義
②権威主義的かつ兄弟不平等・・・直系家族でドイツ/日本・・・自民族中心主義/社会民主主義/ファシズム
③別居かつ兄弟平等・・・平等主義家族でフランス(パリ盆地)/イタリア(南部)・・・共和主義/無政府主義
④別居かつ兄弟不平等・・・絶対核家族でイングランド/北アメリカ・・・自由主義/資本主義
と大まかにグルーピングされることになる。
またトッドは、多産多死から多産少死を経て小産少死型の出生率への移行に決定的に重要なパラメーターは、「女性の識字率」で、女性の識字率が50%を超えると出生率が下がっていくと指摘している。(男性の識字率が50%を超えると、社会の安定化への「テイク・オフ」に入るとも指摘している。)
本書の後半では、地球上の各地域における家族類型を用いて思考パターンで、それぞれに世界史、ついで日本史の出来事の因果関係を考察し、最後に同じく家族類型を通じた考えられる未来予測と提案へと続いている。
確かに文明史観の道具立てとして「家族類型」は大変有力であるし、説得力もある。例えば、直系家族社会の不平等な遺産相続であぶれた次男・三男が、僧兵や修道院に入り歴史を動かしたという流れは理解できた。しかし、本書で例証とした出来ごとの全てを「家族類型」で読み解くのは、やや無理があるなぁと、私は感じる。かなりマクロな変化、つまり大きな潮流を読む上で「家族類型」を洞察に組み込むということはかなり有効だろう。
また本書の中では、サラっとしか触れらていないが、「家族類型の時代による変化」という問題は重要だと思う。日本について、第二次大戦後にマッカーサーが日本に与えた影響として、「ファシズムの温床となった直系家族型から、民主主義的な絶対核家族型へ」の転換を、憲法、教育、民法を通じて進めたとある。実際、民法によって遺産相続が兄弟平等型になり、直系家族型の強い特色を失ったことは、歴史上の大きな事件・事故でないため、目立たないことではあるが、社会構造的なインパクトとしては大変大きなことだったのではないだろうか?と思う。
もうひとつ物足りなさを感じたのが、国別、地理的な分布でなく「階層(階級)」による家族類型の違うということも、パラメーターとして重要なのではないか?と思う。絶対核家族や共同体家族の社会で全体としては教育に不熱心であっても、支配指導者層の家族は教育熱心なのは、地域による差異よりグローバルな共通性と見た方がよいだろう。
目次
序章 人類史のルール
第1章 トッドに未来予測を可能にする家族システムという概念
第2章 国家の行く末を決める「識字率」
第3章 世界史の謎
第4章 日本史の謎
第5章 二一世紀 世界と日本の深層
第6章 これからの時代を生き抜く方法

食文化の新しい流れは、シェフの感性と技術がキモ!

『美食進化論』(辻芳樹・木村結子/晶文社/2002年)
【目次】
1:食文化の交差点 ハンガリー
2:美食の王国に吹く新風 フランス
3:新しい料理の創造 スペイン
4:現実的な美食 アメリカ
【各章のキーワード】
1:ハンガリー
「アルバルドシュ」
「グンデル」
「キシュブダ・ジョンジェ」
〈トカイワイン〉
共産圏崩壊後の食文化復興の動き。西欧に近いだけに類似性の悩ましさと地元客の経済文化的な弱さ
2:フランス
「ル・グラン・ヴェフール」独学人のギィ・マルタン
「メゾン・ド・ブリクール」ブルターニュ地方のローカルとスパイス
「ミッシェル・ブラス」テロワールからブラスのスタイルへの昇華
宮廷料理(オート・キュイジーヌ)とは違う非典型のスタイル。伝統的徒弟制度の枠外から出てきたシェフ達。
3:スペイン
「エル・ラコ・デ・カン・ファバス」 サンティ・サンタマリアの素材主義
「アケラレ」・・・バスク地方
「エル・ブリ」・・・地域性を飛び越えた個人の味覚センス。
普通においしい郷土料理があったために美食が発達しにくかった地で新しい動き。地域性の豊かさとおいしい料理を食べてきた自分たちの味覚への自信。フランス料理を経由しないで“洗練”の美食に到達。料理人が自分なりに哲学をもつこと。
4:アメリカ
「ブーレイ」・・・シェパニスに始まる素材の力を重視する傾向。
「トロッターズ」
「フレンチ・ランドリー」
異なる文化圏の料理のフュージョン(融合)が進んでいる。オリジナルが何か?よりも完成度の高さ、伝統より食べる人の満足度が重要になってきている。
【引用】
夢想家のそしりをおそれずあえて言えば、私は、美食の本質は世界の最良の部分を人と分かち合う喜びにあるのだ、と思っている。(P181)
【この本からの学び】
時代の潮流として、美食の価値は、個々の料理人の創造性(力量)によるところが大きくなってきている。つまり、正統派のレシピやローカリティを越えて、シェフのフィルター(感性と技術)を通したアウトプットとしての料理という価値になってきている。