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4つの家族類型で世界は動く

『エマニュエル・ドットで読み解く世界史の深層』(鹿島茂・ベスト新書・2017)再読。

ソ連崩壊、リーマン・ショック、イギリスのEU離脱、トランプ政権樹立を言い当てたとされ、文明批評の第一人者の一人として日本でも人気の高いのが、エマニュエル・トッドである。そのトッドの理論のベースにある「家族人類学」について、フランス文学を出発点に幅広い分野を語れる鹿島さんが解説してくれる新書である。

最終的には、トッド自身の著作を読んでみるべきだろう。しかし、まずはトッドの思考がどこからくるのか?その根源をイージーに理解するには、ありがたい解説本である。

トッドの著作では細かくは15に家族類型になるが、核になる家族類型は4つであると理解すればよいとしている。4つの家族類型は、「共同体家族」「直系家族」「平等主義家族」「絶対核家族」である。

この4つ類型を、「核家族か二組以上同居する複合家族か拡大家族か?(別の表現では「非権威主義的か?権威主義的か?」という)というタテ軸と、「遺産相続において、兄弟感で「平等」か?「不平等(一子相続)」か?をヨコ軸に図に落とし込んで整理している。

①権威主義的かつ兄弟平等・・・(外婚制)共同体家族でロシア/中国など・・・共産主義/一党独裁資本主義

②権威主義的かつ兄弟不平等・・・直系家族でドイツ/日本・・・自民族中心主義/社会民主主義/ファシズム

③別居かつ兄弟平等・・・平等主義家族でフランス(パリ盆地)/イタリア(南部)・・・共和主義/無政府主義

④別居かつ兄弟不平等・・・絶対核家族でイングランド/北アメリカ・・・自由主義/資本主義

と大まかにグルーピングされることになる。

またトッドは、多産多死から多産少死を経て小産少死型の出生率への移行に決定的に重要なパラメーターは、「女性の識字率」で、女性の識字率が50%を超えると出生率が下がっていくと指摘している。(男性の識字率が50%を超えると、社会の安定化への「テイク・オフ」に入るとも指摘している。)

本書の後半では、地球上の各地域における家族類型を用いて思考パターンで、それぞれに世界史、ついで日本史の出来事の因果関係を考察し、最後に同じく家族類型を通じた考えられる未来予測と提案へと続いている。

確かに文明史観の道具立てとして「家族類型」は大変有力であるし、説得力もある。例えば、直系家族社会の不平等な遺産相続であぶれた次男・三男が、僧兵や修道院に入り歴史を動かしたという流れは理解できた。しかし、本書で例証とした出来ごとの全てを「家族類型」で読み解くのは、やや無理があるなぁと、私は感じる。かなりマクロな変化、つまり大きな潮流を読む上で「家族類型」を洞察に組み込むということはかなり有効だろう。

また本書の中では、サラっとしか触れらていないが、「家族類型の時代による変化」という問題は重要だと思う。日本について、第二次大戦後にマッカーサーが日本に与えた影響として、「ファシズムの温床となった直系家族型から、民主主義的な絶対核家族型へ」の転換を、憲法、教育、民法を通じて進めたとある。実際、民法によって遺産相続が兄弟平等型になり、直系家族型の強い特色を失ったことは、歴史上の大きな事件・事故でないため、目立たないことではあるが、社会構造的なインパクトとしては大変大きなことだったのではないだろうか?と思う。

もうひとつ物足りなさを感じたのが、国別、地理的な分布でなく「階層(階級)」による家族類型の違うということも、パラメーターとして重要なのではないか?と思う。絶対核家族や共同体家族の社会で全体としては教育に不熱心であっても、支配指導者層の家族は教育熱心なのは、地域による差異よりグローバルな共通性と見た方がよいだろう。

目次

序章 人類史のルール
第1章 トッドに未来予測を可能にする家族システムという概念
第2章 国家の行く末を決める「識字率」
第3章 世界史の謎
第4章 日本史の謎
第5章 二一世紀 世界と日本の深層
第6章 これからの時代を生き抜く方法